「一文が長い」と指摘されたライターが最初に聞くのは、たいてい同じ質問です。何文字までならいいんですか。
答えにくい質問でもあります。文字数と読みやすさは直接つながっていないからです。100文字でも読みやすい文はあるし、50文字でも構造が入り組んでいれば詰まる。日本語には「この長さを超えたら破綻する」という客観的な境界がありません。
それでも数字を決めたほうがいい、というのがこの記事の立場です。理由は、基準がないと指摘が主観になるから。
基準がないと、指摘が人によって変わる
一文の長さは、編集者の感覚で判定されがちな項目です。同じ原稿でも、Aさんは指摘してBさんは通す。ライターから見ると、何が正解なのか分かりません。
「読みにくいと思ったところを直してください」は、指示として機能しません。読みにくさは読み手の側にあるので、書き手には見えない。だからライターは、指摘された箇所だけ直して、次の記事でまた同じ長さの文を書きます。
数字を決めると、ここが変わります。80文字という線を引けば、書いた側が自分で判定できる。編集者に見せる前に自分で気づける。数字の正しさより、判定を書き手に返せることのほうが価値があります。
80文字と、読点4個

日本語校正マネージャーの既定値はこうしてあります。
| ルール | 既定値 |
|---|---|
| 1文の最大文字数 | 80文字 |
| 1文内の読点の数 | 4個まで |
| 同じ接続詞の連続 | 2回以上で警告 |
80という数字は、Webの本文でよく使われる目安から取りました。厳密な根拠のある値ではありません。この数字自体は重要ではない、というのが設計の前提です。重要なのは、あとで変えられること。
読点の数を別に見ているのは、文字数だけでは長さの質を捉えられないからです。
設定画面を開き、プロファイルを選択し、ルールの一覧から対象を探し、重要度を変更して、保存します。
これは50文字ほどしかありませんが、読点が4つ入っていて、途中で息継ぎができません。文字数のチェックだけだと通ってしまう。逆に、読点がなく一直線に続く90文字の文は、読点チェックには引っかからず文字数で引っかかる。二つの角度から見ることで、片方だけでは漏れるものを拾えます。
同じ接続詞の連続も入れてあります。「そして」で始まる文が3つ続く、「また」が段落の頭に何度も出る、といったケース。これは長さの問題ではありませんが、読んだときの詰まり方が似ています。
数字を絶対視しない
80文字を超えたからといって、その文が悪いわけではありません。
- 引用文が長い(変えられない)
- 専門用語が続く技術記事(分割すると意味が切れる)
- 対比構造の文(「Aは〜だが、Bは〜だ」を割ると論旨が弱くなる)
こういう文は超えます。超えて構いません。だから既定の重要度はWarningで、公開は止まりません。同梱のルールはすべてWarningから始まる設定にしてあります。
指摘が出たときにやることは、直すか、無視するかの二択です。無視は「この指摘のみ」「この投稿のみ」といった単位で記録できるので、次に同じ記事を開いたときに同じ指摘が再び出ることはありません。
相手によって閾値を変える


ここがこの製品で書いておきたいところです。一文の上限はルール固有のパラメータとして持っていて、ライターやカテゴリごとに上書きできます。
たとえばこう組めます。
- サイト共通:80文字、読点4個
- ライター「入って3ヶ月のAさん」:60文字、読点3個
- ライター「10年書いているBさん」:長文ルールを無効化
- カテゴリ「技術解説」:100文字(用語が続くので緩める)
Aさんが技術解説を書くとどうなるか。レイヤーの順位は「カテゴリ < ライター」と決まっているので、ライター側の60文字が勝ちます。カテゴリで緩めた100文字は、Aさんには適用されません。
この順位は固定です。この仕様にしたのは、数値の優先度で入れ替えられるようにすると、どのルールがなぜ効いているのかを誰も説明できなくなるからでした。代わりに、割り当ての画面でその投稿・その書き手に実際に効いている設定をプレビューできるようにしてあります。
新人には細かく、ベテランには重大な指摘だけ。これを1つのルールセットで表現しようとすると、必ずどちらかに合わなくなります。閾値をレイヤーで分けられることの意味は、そこにあります。仕組みの詳しいところはレイヤー合成の記事で書きました。
直し方は機械に決められない
長文の指摘に修正ボタンは出ません。
どこで割るかは、文の構造を読まないと決まらないからです。「〜し、〜し、〜する。」を機械的に句点で割ると、主語が消えたり接続がおかしくなったりする。ワンクリック修正が効くのは、置き換え先が一意に決まる指摘(表記ゆれ・冗長表現・全角半角)だけにしてあります。
長文チェックがやるのは、場所を示すことまでです。「1文が112文字あります(上限80文字)」「1文に読点が6個あります(上限4個)」と出して、あとは書き手が判断する。
これで十分だと考えているのは、長さの問題は指摘されればほぼ自分で直せるからです。気づけないことが問題であって、直し方が分からないわけではない。
語尾のリズムは別で見る
一文の長さを整えても、まだ読みにくい記事があります。全部の文が同じ語尾で終わっているケースです。
設定画面を開きます。プロファイルを選択します。重要度を変更します。
長さは十分に短いのに、単調で読み進みにくい。これは長さではなくリズムの問題なので、文体チェックのほうで扱っています。同じ語尾が何文続いたかを見る仕組みです。
長文チェックを含む8種類のチェックをWordPressの編集画面で動かす全体像は編集フローの記事に、閾値の設定画面などは日本語校正マネージャーの製品ページから確認できます。
