SEOプラグインが出す読みやすさの評価は、日本語の記事を書いているかぎり、文章の良し悪しの目安にはなりません。ただし理由は日本語対応が遅れているからではない。あのスコアは最初から、日本語の校正とは別のものを測っています。
だから「日本語に対応すれば使えるようになる」という待ち方も、「評価が悪いから記事が悪い」という読み方も、どちらも外れます。まず何を測っている数字なのかをほどいて、そのうえで日本語の記事では代わりに何を数えるのかへ進みます。
スコアが立っている土台は、英語の文章の研究
読みやすさ分析の観点として置かれることが多いのは、このあたりです。
- 一文あたりの語数
- 受動態の割合
- 接続表現が入っている割合
- 段落の長さ、小見出しが出てくる間隔
- 読みやすさ指数(語数と音節数から計算する式)
どのプラグインが現在どれを持っているかは版によって変わるので、個別の挙動には踏み込みません。共通しているのは、どれも英語の文章を対象にした研究から来ているという一点です。読みやすさ指数にいたっては、もともと英語圏で「この文章は何年生なら読めるか」を推定するために作られた式が出発点になっています。
土台がそこにある以上、これは実装が日本語に追いついていないという話ではありません。移してくると、数える単位のところから噛み合わなくなる。
語を数えるところから、日本語では合わない
どこがずれるのか。3つ見れば十分です。
語数。英語は空白で語が切れるので、1文が何語かはそのまま数えられます。日本語は分かち書きをしないので、「1文20語」に相当する単位が自明ではない。文字数で代用することになり、その時点で英語の閾値は持ち込めません。
受動態。英語の be + 過去分詞のような目印が日本語にはありません。「〜される」は受身にも、尊敬にも、可能にも、自発にも使う形です。表面の形だけで数えると、受動態ではない文が同じ籠に入ります。
接続表現。英語向けの指標では、接続表現がある程度の割合で入っているほうが読みやすい、という置き方をされることがあります。日本語で同じ数え方をすると、向きが逆になる場面が出てくる。同じ接続詞で始まる文が続く原稿は、むしろ読みにくい。日本語校正マネージャーの長文チェックが「同じ接続詞の連続は2回以上で警告」を既定に持っているのは、日本語では入れすぎのほうが引っかかりを生むからです。
同じ名前の観点でも、言語が変われば逆を向くことがある。ここが、日本語対応というスイッチで解ける種類のずれではない、という中身です。
点数は、直す場所を指さない

指標のずれとは別に、もうひとつ性質の違いがあります。スコアは記事1本につき1つの数字だということ。
数字がひとつだと、運用は「上げる」に向かいます。評価を良くするために文を割る、小見出しを足す。上げた結果として記事のどこが良くなったのかは、誰にも残りません。逆に評価が低いままでも、直すべき箇所は示されないので、書き手は何をすればいいのか分からない。
校正の指摘は点数ではなく、位置です。どの文字列が、どのルールに当たったのか。サイドバーの一覧から本文の該当箇所へ飛べる形になっています。
日本語校正マネージャーに総合点を出す機能は入れていません。返すのは重要度別の件数(Error / Warning / Info / Suggestion)と指摘の一覧まで。件数をひとつの数字に丸めなかったのは、丸めた瞬間に「点を上げる作業」が「記事を直す作業」から離れてしまうからです。Error 1件を直すよりWarningを10件消すほうが合計は動く、という逆の誘導が生まれる。
日本語の記事で数えられるもの

では、代わりに何を見るか。文字列だけで機械的に決まるのは、この3つです。
- 一文の長さ(文字数)
- 1文に入る読点の数
- 同じ語尾が何文続いたか
長さと読点の既定値は80文字・4個にしてあります。この数字自体に厳密な根拠はなく、変えられることのほうが本体という立場で置いたものなので、決め方は一文の長さの基準のほうに書きました。
数えるとどうなるか、このサイトで試しました。校正まわりで公開してある15本を、箇条書きと表を除いた本文で機械に通すと1,118文。80文字を超えたのは12文で、読点が5個以上入った文は0文でした。最長は107文字。
12文の内訳がおもしろくて、うち3文は記事末尾に毎回置いている関連記事への案内で、ほぼ同じ形をしています。最長の107文字は、括弧の中にプラグインの名前を並べた文。次に長い102文字も、ダッシュボードに出る項目をカンマで区切った列挙です。割って読みやすくなるかというと、たぶんならない。
つまり長さの指標がこの15本について言えることは、ほとんど何もありません。それは記事が完成しているという意味ではなく、長さは崩れたときに引っかかる網であって、品質の点数ではないという意味です。緑や赤で返ってくる評価に慣れていると、この違いが見えにくくなります。
表記が揃っているかは、どのスコアにも入っていない
「お問合せ」と「お問い合わせ」が1本の記事に混ざっていても、文の長さは変わりません。段落の数も接続表現の割合も動かない。読みやすさの評価は、混在に対して何も反応しない。欠陥ではなく、対象の外にあるだけです。
そして表記の一貫性は、汎用の点数にしにくい性質を持っています。何を正とするかが媒体ごとに違うから。「ユーザー」と「ユーザ」のどちらが正しいかは日本語の問題ではなく、その編集部が決めたかどうかの問題です。判定できるのは辞書を持っている側だけ。
日本語校正マネージャーが同梱している辞書も、4種を合わせて73件と控えめで、許可語の辞書にいたっては空の器のまま入っています。自社の表記レギュレーションはそこへ足していく前提です。逆に言えば、辞書に1行も足していないサイトでは、この製品も一貫性については何も言えません。持ち込まれた基準がなければ判定は成り立たない、という点は評価スコアと同じです。
SEOプラグインは、外すのではなく校正の対象に入れる
読みやすさの評価が当てにならないからといって、SEOプラグインを外す理由にはなりません。読みやすさ以外の仕事はそのまま残ります。
むしろ校正の側から見ると、SEOプラグインは対象です。Yoast SEO / Rank Math / All in One SEO のSEOタイトルとメタディスクリプションは、保存済みのデータから読み込んで、本文と同じ辞書・同じルールで校正できます。有効になっている1つは自動で判定するので、どれを使っているかを選ぶ設定はありません。本文で「お問い合わせ」に統一しているなら、その2欄も同じ基準で見られる。
ただし本文の外にある欄には制約があって、評価が走るのは保存時と手動チェックのときだけ、ワンクリック修正のボタンも出ません。このあたりの線引きは本文以外のフィールドを校正する話にまとめてあります。
読みやすさスコアに期待していいのは、記事の骨格へのざっくりした反応まで。表記が揃っているか、語尾が単調でないか、一文が伸びきっていないかは、別の道具で見る。分けてしまえば両方とも使えます。ひとつの数字に両方を求めたときだけ、どちらも使えなくなる。
校正のほうを編集フローのどこに置くかという設計は編集フローの記事で扱いました。対応しているSEOプラグインと動作要件は、日本語校正マネージャーの製品ページに一覧があります。
