三点リーダーの使い方は、出版の慣習とWeb記事で食い違う

小説の新人賞の応募規定と、Webメディアの表記ガイドライン。三点リーダーについて書いてあることが、この二つでは噛み合いません。

前者には「三点リーダーは2つ重ねる(……)」と明記されているものがあります。後者は、そもそも項目として存在しないことが多い。決まっていないので、書き手ごとに ・・・... が混ざります。

先に立場を書いておくと、この記事は「どれが正しいか」を決めません。決めるのは、自分の媒体でどれを使うかと、同じ記事の中で混ぜないこと。この2つだけです。

目次

「……」と2つ重ねる慣習は、紙の組版から来ている

出版や文芸の側では、三点リーダーを2つ重ねて使うのが基本とされてきました。 ではなく ……。ダッシュを —— と重ねるのと同じ発想です。

理由は組版寄りのところにあります。三点リーダーが担っているのは、沈黙・言いよどみ・余韻といった「時間の長さ」で、記号1つぶんだと間が短すぎる。台詞の途中で言葉が途切れる場面を 1つで書くと、あっさり通り過ぎてしまいます。だから2つ、長く止めたいときは4つ。偶数で使うという言い方も、この延長にあります。

この慣習は今も生きています。ただし生きているのは、三点リーダーを演出の道具として使う文章の中で。

Web記事に出てくる三点リーダーは、用途がちがう

三点リーダーを2つ重ねる場合と1つで使う場合の、用途の違いを対比した図

メディア記事で三点リーダーが登場する場面を並べると、こうなります。

  • 見出しやリードで言いさす(「読まないと損をする…かもしれない」)
  • インタビューで言葉が途切れた箇所をそのまま起こす
  • 「AとBとCと…」のように、列挙の途中で切る
  • システムが長いテキストを切り詰めた箇所(一覧の抜粋など)

演出というより、省略と言いさしの記号として働いている。この用途なら 1つで足ります。

Webにはもうひとつ、紙にない事情があります。同じ本文がスマホの狭い幅でもPCの広い幅でも表示され、行の折り返し位置が読者ごとに変わる。文字を2つぶん使って作った「間」が、意図した通りに見えるとは限りません。

とはいえ、Webだから …… が間違いという話でもない。エッセイや小説を載せているメディア、インタビューを一問一答の形で起こすメディアなら、…… のほうが自然に読めます。載せている文章の性質で決まる話であって、紙かWebかで決まる話ではありません。

正しさを探すより、自分の媒体で決めたほうが早い

に揃えたサイトも、…… に揃えたサイトも、読者は困りません。どちらでも読める。引っかかるのは、同じ記事の中で書き方が変わっているときだけです。

決める前に、自分の記事でどう出てきているかを数えたほうが早い。このサイトでも一度やってみました。公開済みの記事から、三点リーダーの表記そのものを論じた記事(つまり校正まわりの1本)を除くと、本文に出てくるのは9箇所。うち8箇所は「を・が・は・に…」「○○市、△△市…」のように列挙を言いさす用途で、いずれも 1つ。残る1箇所だけが …… で、そこは「また1つ選んで色を指定……と47回繰り返す」という、うんざり感を出したかった文でした。書き手がほぼ自分ひとりのサイトでも、演出寄りの場面が一度出てくると長さが変わる。決めていないというのは、そういう状態を指します。

数え終われば、決めるほうは早い。出てくる場面が演出寄りなら ……、省略寄りなら 。迷ったら1つのほうが揃えやすいはずです。入力の手数が少なく、行の幅も食わないので。

3種類が同じ記事に並ぶと、どう見えるか

三点リーダーの3種類が混ざると起きる幅・見え方・中黒との衝突を示した図

具体で見たほうが早いので、混ざった状態を書いてみます。

詳しくは後述しますが…ここに落とし穴があります。手順は3つ・・・と言いたいところですが、正確には4つ。結論から言うと…この設定は触らないほうがいい。

3文で3種類。作為的な例に見えて、外部ライターが3人いるメディアでは普通に起きます。

並べたときに効いてくるのは、次の3点です。

  • 幅が揃わない は全角1文字ぶん、... は半角3つぶん、・・・ は全角3文字ぶん。行の中で占める長さが最大で3倍違う
  • 点の見え方が違う... はフォントによって下寄りに詰まって見え、・・・ は中黒なので点が大きく間隔も開く。同じ「3つの点」には見えない
  • 中黒の用途とぶつかる・・・ を使っていると、並列の区切り(赤・青・黄)や外来語の区切り(ジャン・ポール)と同じ記号が本文に混在する

3つ目が運用でいちばん面倒です。あとで表記を統一しようと で検索をかけると、直したい箇所と触ってはいけない箇所が同じ検索結果に並ぶ。一括置換が使えません。

読者側の印象も書いておくと、「段落ごとに書いた人が違う」に近い読み心地になります。書き手は同じでも、記号の癖だけが別人のように残る。

混ざる原因は、注意不足ではなく入力方法

・・・ と書く人が横着をしているわけではありません。 の出し方を知らないだけ、というのがほとんどです。

を単独で入力する経路は、環境によって違います。日本語入力で「てん」や「さんてん」から変換する、記号のパレットから拾う、... と打ってから変換する。どれも知っていれば一瞬ですが、知らなければ出せない。出せない人は、見た目が近い中黒を3つ並べます。

原稿の出どころでも変わります。Wordのように ... を自動で へ置き換えるソフトがある一方、ブロックエディタは打った通りに残す。同じライターでも、Wordで書いた回とエディタに直接書いた回で結果が変わることになります。

この構造は、全角の 100% や全角スペースが混ざるのと同じです。書き手の意識ではなく、入力環境と経路の副作用として発生する。そちらは全角・半角の統一の記事に書きました。

同梱の校正ルールは「……」側に立っている

決めたことを書いている画面で守らせる、という話に移ります。ここは自分の作ったものの話なので、都合の悪いところも含めて書きます。

日本語校正マネージャーの句読点チェックが三点リーダーについて見ているのは2つです。・・・...(半角ピリオド3つ以上)を代用表記として指摘するのが1つ。もう1つが、単独の を「2つ重ねが慣例」として指摘するほう。つまり同梱のルールは、出版側の慣習を既定として持っています。逆に …… は指摘しませんし、………… のように長く連ねたものも通します。

ということは、 1つに揃えると決めた媒体では、揃えた箇所が全部指摘されることになる。前の節で数えた9箇所でいうと、指摘が出ないのは …… の1箇所だけ。このサイトの記事に既定のまま当てれば、残る8箇所は指摘されることになります。自分の書いたものに自分のプラグインの既定が逆を向く、という関係です。

側に決めたなら、やることは3つのどれかです。句読点ルールの重要度をInfoやSuggestionまで下げる、割り当てているプロファイルからそのルールを外す、あるいは「このルールを一時停止」で止める。ただし三点リーダーの判定だけを外すパラメータは用意していません。句読点チェックの設定で変えられるのは、、。,. のどちらに統一するかと、段落末の句点を必須にするかの2つだけ。細かく切り分けたい人には足りない粒度です。

もうひとつ、この指摘にワンクリック修正のボタンは出しません。内部では …… という置換案まで持っているので、ルールの設定で許可すればボタンは出せます。出さない既定にしたのは、押した瞬間に媒体の方針が …… 側へ確定してしまうからです。表記ゆれの WordpressWordPress は誰がやっても答えが同じですが、三点リーダーは違う。句読点チェックが見ている他の項目——句点の抜け、,. の混在、連続句読点、感嘆符・疑問符——は、さきほどの全角・半角の記事の後半にまとめてあります。

決定そのものは1行に圧縮しておくのが結局いちばん残ります。「三点リーダーは 1つ。・・・... は使わない」。条件と例外を足すほど守られなくなるので、細部は捨てる。そのうえで、ルール側の既定が自分の決定と逆を向いていないかだけ、最初に確認しておく。ここが噛み合っていないと、正しく揃えた箇所ほど指摘の一覧に並ぶことになります。

ルールの重要度やプロファイルの割り当てをどこで変えるかは、日本語校正マネージャーの製品ページから追えます。

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