校正ツールに原稿を渡すと外部へ送信されるのか:導入審査で確認する順番

社内のレビューに回った時点で、校正ツールの評価軸は入れ替わります。検出精度でも操作性でもなく、情シスと法務が見るのは1点だけ。公開前の原稿が社外へ出るのかどうか。ここに一行で答えられないと、稟議はそこで止まります。

日本語校正マネージャーの答えは二段構えです。ふだんの校正はサイトの中で完結する。外へ出る経路はAI最終チェックの1本だけで、それは既定でオフ、しかも同意を別に取らないと動きません。

以下、審査で確認される順に、送る単位・既定の状態・同意の要否・ログの扱いまで並べます。

目次

判定がどこで走るかを最初に確定させる

校正の判定はPHP、つまりそのサイトのサーバ側だけで動きます。ブロックエディタは結果を受け取って表示する係で、ルールの中身をJavaScript側に持っていません。辞書もルールも指摘のログも、置き場所はそのWordPressのデータベースです。

書いた本人の記憶は根拠になりません。この記事を書く前に、手元でコードのほうを追い直しました。ブロックから文字を取り出し、辞書とルールに当て、指摘を返してログに書くまで。校正のこの経路には、外部へHTTPを投げる処理が入っていません。エディタ側が叩く先も /jpl/v1/check/ai-review/ignores・辞書エントリの4本で、どれも同じサイトのREST APIです。校正を走らせるだけなら、原稿はWordPressの外へ出ません。

外へ出る経路は1本。開けるには4つ揃える

AI最終チェックで外部送信が起きるまでに必要な4つの条件を並べた図

原稿を外へ送るのはAI最終チェックだけです。裏を返せば、この機能を開けない限り送信は発生しません。

開くには次の4つが揃っている必要があります。

  • WordPress 7.0以上(プラグイン本体の動作要件は6.6以上で、AI機能だけが7.0以上)
  • サイト側にAIプロバイダが用意してあること。キーはプラグインが持たず、設定>コネクターや wp-config.php の定数といったサイト側の経路で渡す
  • 設定画面のチェックボックスを2つともオンにすること
  • 実行する人が capability jpl_use_ai を持っていること(既定では管理者だけ)

2つ目のチェックボックスは「投稿本文を AI プロバイダへ送信することに同意する」という文言で、機能の有効化トグルとは別に置いてあります。どちらも既定はオフ。加えて、素のWordPress 7.0を入れただけではプロバイダがいないので、そもそもパネルが表示されません。

つまり「使わない」という審査結果になったなら、設定作業は発生しません。AIを閉じたままでも8種別のチェックも公開前ゲートもダッシュボードも動きます。何がどこに乗るのかの全体像は編集フローに校正を組み込むのほうに書きました。

開けた場合、何がどの単位で出ていくか

サイト内で完結するふだんの校正と、外部へ送るAI最終チェックを比べた図

ここからは「使う」と決めた場合の項目です。

送信の単位はセグメントで、タイトル・抜粋・記事のブロック1つずつを、通し番号とテキストだけのJSONにして渡します。投稿ID、著者名、サイトのURLは載りません。

その手前で落ちるものがあります。

扱い対象
そもそも送らないコード / HTML / 整形済みテキスト / 埋め込み / ショートコードのブロック
設定に従う引用ブロック(既定は除外)
置き換えてから送るURL・メールアドレス・ショートコード(同じ文字数のマスク文字になる)

AI用にテキストの抽出処理を別で書くこともできましたが、それをやると校正の除外設定が片方にしか効かなくなります。同じ抽出を通しているので、引用を校正から外している媒体では、その段落はAIにも渡りません。

上限は合計8,000文字。超えるぶんは文の途中で切らず、セグメントごと落とします。落ちた場合はパネルに「本文が長いため、一部のみを対象にしました。」という警告が出るので、どこまで送られたのかを人が確認できる。

実行は手動だけです。編集中のデバウンス自動チェックからは呼ばれませんし、保存でも公開でも走りません。ボタンを押した回数ぶんしか送信は起きない、と説明できます。

返ってくるのは指摘(引用・置換案・理由)だけで、書き換え済みの原稿は受け取りません。その設計をなぜそうしたかはAI最終チェックの記事に書いたので、審査の側は「送信は手動1回ぶん、受信は指摘のみ」を押さえておけば足ります。

ひとつ、こちらで保証できない範囲も書いておきます。送った先での保存や学習の扱いは、サイトが契約したプロバイダ側の条件で決まります。プラグインはキーを持たず、そこに介入する立場にありません。契約で外部送信そのものがNGなら、開けないほうが早い。

誰が実行できて、その記録がどう残るか

jpl_use_ai は既定で管理者にだけ付きます。編集者や投稿者に使わせたい場合は、明示的に付与する運用になります。

権限まわりで、審査のときに効く挙動が1つあります。ロールへのcapability付与は初回インストールのときだけで、後から外した権限がプラグインの更新や再有効化で復活することはありません。「編集者から強制公開の権限を剥がした」という判断が、次のアップデートで黙って巻き戻らないようにしてあります。

AI実行の履歴も、残すかどうかを選べます。既定はオフ。オンにすると日時・対象の投稿・実行した人・採用した指摘数・破棄した指摘数を直近50件ぶん保存しますが、原稿のテキストは入りません。

誰がどの範囲まで指摘を消せるか(本人の記事だけか、サイト全体か)はルールの重ね方をまとめた記事のほうにあります。

サイトに残るログは原稿を持たない

外部送信と並んで聞かれるのが、社内のどこに何が溜まるかです。

校正ログは2階層になっています。サマリが重要度別の件数・公開ブロックの発生・適用したプロファイル、明細がルールキー・重要度・該当箇所のテキスト断片・ブロック位置。

線引きは3つ。原稿の全文は保存しません。断片は100文字以内で切ります。明細そのものを記録しない設定もあります。

保持期間は既定90日で、日次のWP-Cronが超過分を消していきます。1日から3,650日の範囲で変えられるので、社内規程の年数に寄せられる。編集中のデバウンス自動チェックは記録の対象外です。

逆に、残す側へ倒した項目もあります。Error指摘が残ったまま強制公開した事実と、それを実行した人は記録されます。監査で必要になるのは、止めた回数より止まらなかった回数のほうなので。

稟議に貼る形にしておく

審査項目と回答を1枚にすると、こうなります。

確認項目回答
判定の実行場所サイト内(PHP)。校正のために外部APIを呼ばない
原稿の外部送信AI最終チェックのみ。機能は既定オフ
送信の単位と上限タイトル・抜粋・ブロック単位、合計8,000文字まで
同意有効化トグルとは別に送信同意が必要(どちらも既定オフ)
実行の権限jpl_use_ai(既定は管理者のみ)+対象記事の編集権限
送信のきっかけ手動実行のみ。自動チェック・保存・公開では送らない
ログの中身全文なし。テキスト断片は100文字以内。明細はオフ可
保持期間既定90日・日次削除。1〜3,650日で設定

この表を先に埋めてから審査へ出すと、往復が1回で済みます。逆に「原稿を外部送信しません」とだけ書いて出すと、AI機能の有無を聞かれた時点で差し戻しになる。送る経路が1本あって、それが既定で閉じているという書き方のほうが通ります。

導入側で決めることは2つだけです。AI最終チェックを使うか(使わないなら初期状態のまま触らない)、そして明細ログを残すか・何日で消すか。残りは既定値のまま説明できる状態にしてあります。

同意のチェックボックスや保持日数の設定がどの画面にあるかは、日本語校正マネージャーの製品ページに載せてあります。

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