3,000文字の記事の、真ん中あたりの一段落だけ、文体が変わっていることがあります。
です・ます調で進んでいたのに、「〜である。」「〜だ。」が数文続く。だいたいは、他の資料から要点をまとめて書いた箇所か、書いている途中で集中が切れた箇所です。書き手は気づきません。前後を続けて読み返さないと、変わったことに気づけないからです。
読者は気づきます。ただし「文体が混ざっている」とは認識せず、「なんとなく読みにくい」と感じて離れる。指摘されない不具合なので、放置されやすい。
混在の検出は、多数決から始まる

機械で文体の混在を見つけるとき、最初に決めるのは「どちらが正なのか」です。
設定でサイト全体を「です・ます調」と決めておく方法もありますが、それだと運用が硬くなります。コラムだけだ・である調にしたい、といった例外に対応できない。
日本語校正マネージャーでは、記事の中の語尾を数えて、多数派を基調とみなす方式にしました。です・ます調の文が20、だ・である調の文が3なら、基調はです・ます調。少数派の3文を指摘します。
この方式の良いところは、設定を書かなくても動くことです。だ・である調で書かれた記事なら、自動的にそちらが基調になる。混在しているかどうかだけを見るので、どちらの文体を採用しているかを事前に登録する必要がありません。
弱点もあって、半々に混ざっている記事では基調が定まりません。ただ、半々まで混ざっているならそれは文体の混在というより書き直し案件なので、機械の指摘に頼る場面ではないと考えました。
「〜ですか」をだ・である調と誤判定しない
文末を見るとき、素直に末尾の2文字を取ると失敗します。
「これは必要でしょうか。」の末尾は「うか」です。「設定は完了しましたね。」は「たね」。終助詞(か・ね・よ)が付いているだけで、文体としてはどちらもです・ます調なのに、末尾の文字列だけ見ると判定できません。
そこで、判定の前に終助詞を剥がす処理を入れてあります。「〜ですか」→「〜です」、「〜ますね」→「〜ます」と正規化してから、です・ます調かだ・である調かを見る。
これは開発していて途中で気づいた穴です。問いかけを多用する記事を検査したら、疑問文が軒並みだ・である調として指摘された。読者に問いかける書き方は普通にあるので、そのままでは使い物になりません。
同じ語尾が続くのも、文体の問題
混在と並んで検出しているのが、同じ語尾の連続です。
設定画面を開きます。プロファイルを選択します。ルールの一覧が表示されます。重要度を変更します。
4文とも「〜します。」で終わっています。文法的にはどこも間違っていません。ただ、読むと単調で、書いた人の温度が伝わってこない。手順の説明ではこうなりがちです。
既定では同じ語尾が3文続いたところで指摘が出ます。この数字はルールのパラメータなので、変更できます。手順記事の多いメディアなら4や5に緩めてもいいし、コラム中心なら2に締めてもいい。
直し方は機械には決められません。体言止めにするのか、短い文を挟むのか、順番を入れ替えるのか。だからこの指摘に修正ボタンは出ません。「ここが単調になっている」と場所を示すところまでが機械の仕事です。
口癖には閾値を設定する
もう一つ、特定の表現の使いすぎを見る機能があります。
「〜と思います」「〜でしょう」「〜かもしれません」。1本の記事に2回なら気になりませんが、8回出てくると印象が変わります。断定を避ける癖が強い書き手は、これを大量に使う。
この検出は、表現と閾値をセットで登録する形です。「〜と思います」を3回まで、といった設定をルールのパラメータに書く。既定では何も登録されていない空の状態にしてあります。
空にしたのは、口癖の基準がメディアごとに違いすぎるからです。「〜と思います」を排除したいメディアもあれば、書き手の顔が見える文体として推奨しているメディアもある。同梱で勝手に決めると、片方には確実に邪魔になります。
自社の記事を10本ほど読んで、目についた言い回しから登録するのが現実的です。
判定していないこと

文体チェックで扱えないものも書いておきます。
- 敬語の過不足は判定しません。「二重敬語になっている」「ここは謙譲語であるべき」といった指摘は出ません
- 口語表現がくだけすぎているかも判定しません
- 文の分かりにくさも対象外です。文体が統一されていて語尾も散っている悪文は、指摘なしで通ります
理由は、これらが品詞や意味の理解を必要とするからです。この製品は形態素解析を使っておらず、辞書と正規表現と文分割で判定しています。語尾の文字列を見て文体を分類することはできても、敬語の階層は扱えません。
できないことをできるように見せると、指摘が出ないことを「問題なし」と読まれてしまいます。文体チェックが見ているのは、混在と単調さと口癖の3つだけです。
メディアによって、強さを変える意味がある
文体ルールは、他のチェックよりも「どこに効かせるか」が効いてきます。
ニュース記事では文体の統一を厳しく、コラムでは緩く。この使い分けは、カテゴリごとにルールの重要度を変えることで表現できます。ニュースカテゴリだけ文体混在をErrorにして、公開前に止める。コラムカテゴリでは無効にする、といった具合です。
ライター単位でも変えられます。文体が安定している書き手には出さない、入ったばかりの人には出す。設定は7つのレイヤーの合成で決まる仕組みで、レイヤー合成の記事に詳しく書きました。
語尾の話と、長さの話
文体チェックは「どう終わるか」を見ています。読みにくさのもう一つの原因である「どこまで続くか」——一文の長さと読点の数は、別のチェックで扱います。そちらは一文の長さの記事に。
WordPressの編集画面でこれらをどう回すかは編集フローの記事、機能一覧は日本語校正マネージャーの製品ページから。
