クリニックの症状チェックをWordPressで作る — 診断ではなく受診の目安として置く

来院前に「受診したほうがいいのか」を自分で確かめてもらうチェックを、自院のサイトに置きたい。仕組みそのものはWordPressで完結します。ただしこのテーマは、設問を考え始めるより前のところで一度止まる。使える言葉の範囲が、設計より先に決まってしまうからです。

医療は広告や表示の扱いが他業種とは別の体系にあり、サイトに置く症状チェックの文言もその中に入ります。なのでこの記事は、設問設計の前に表現の線引きから入り、「診断ではなく目安」として成立する形に落として、条件分岐の組み方と受診・問い合わせへの着地まで順に見ていきます。同じ型でエステの肌診断を作る話はエステ・美容サロンの肌診断に書きましたが、医療系で別物になるのはそこから先の表現の制約だけ。

目次

最初に決まるのは設問ではなく、書ける言葉の範囲

症状チェックで出さない病名や確度の表現と、出していい案内を比べた図

自院サイトの表示は、医療広告ガイドライン厚生労働省が定める、医療機関のWebサイトや広告に書いてよいこと・いけないことの基準。患者の体験談や治療効果の断定などが制限される。や薬機法医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律。化粧品・健康食品・医療機器などの広告で、効能効果の言い方を制限する。といった、一般的な広告表現とは別の物差しで見られます。何がどこまで該当するかは、掲げている診療科や書き方、置く場所によっても変わる。ここで確実に言えるのは、その判断をプラグインの機能で肩代わりすることはできないという一点だけです。文言の可否は自院で決め、必要なら専門家に確認するしかありません。

この記事でも解釈の断定はしません。代わりに、確認を仰ぐ前の段階で自分たちが決められることを絞ります。要するに、何を出力しないと先に決めておくか。

  • 病名・疾患名を結果に出さない
  • 回答の組み合わせから特定の病気を示唆しない
  • 「〜の疑いがあります」「〜の可能性が高いです」のような確度の表現を使わない
  • 治る・改善するといった効果の断定をしない

この4つを禁じ手として置くと、残りの設計はむしろ楽になります。出していいのは、受診の目安・来院前の準備・該当しそうな診療科の案内・相談窓口への導線まで。判定ではなく案内です。ここを握らないまま設問から作り始めると、結果の原稿を全部書き直すことになります。

出すのは判定結果ではなく「次にどうするか」

症状チェックに来た人が欲しがっているものを取り違えると、この企画は成立しません。来院を迷っている段階で知りたいのは病名ではなく、今すぐ行くべきか、様子を見ていいか、行くなら何を持っていけばいいか。病名を当てにいかなくても、この3つには答えられます。

そう考えると、結果コンテンツの中身は自然に決まります。

  • 早めのご相談をおすすめする場合の案内と、予約ページ・診療時間
  • 来院前に控えておいていただきたいこと(いつからか、どんなときに変化するか、服用中のもの)
  • 該当しそうな診療科・外来のご案内
  • オンライン相談や電話窓口への導線

入口の文言も同じ調子で揃えます。「診断します」ではなく「受診の目安を確認できます」。ただし置き場所には注意が要ります。この診断はスタート画面を挟まず1問目がいきなり出る作りなので、開始ボタンや冒頭の案内文という設定項目はありません。 前置きはショートコードを貼ったページの本文に書くか、診断の枠の中に出したいならデザインタブのタイトル欄に入れることになります。

診断の枠の中に出ることばは、テキストタブでいくつか差し替えられます。医療系で必ず見直しておきたいのは、そのうち1つ。どの条件にも当てはまらなかったときの表示です。

最後まで答えたのに何も返らない空振りは、医療系では特に印象が悪い。だから、どの条件にも当てはまらなかった人向けの共通結果を1つ置いておく——これは業種を問わず必要な話なので、前掲のエステの記事に譲ります。そのうえで最後の砦になるのが、いま挙げた0件時の文言です。既定の「条件に合うコンテンツが見つかりませんでした。」は、症状を答えきった人に返すことばとしては冷たいので、相談窓口への一言に差し替えておきます。

条件は結果側に持たせて、無理に1つへ寄せない

診断シミュレーションProの分岐は、選択肢から結果へ線を引く形ではありません。結果コンテンツのほうが「どの設問でどの選択肢が選ばれていたら自分を表示するか」という条件を持ちます。 これを回答マトリクスと呼んでいます。設定した条件をすべて満たしたとき(AND判定)に表示され、条件に入れていない設問は「不問」として判定に影響しない。

症状チェックでこの向きが効くのは、答えを1つに絞り込まなくていいからです。病名の判定に使わない軸だけで3問組んでみます。

  • Q1 気になっている状態が続いている期間(数日 / 数週間 / それ以上)
  • Q2 日常生活への影響(ほとんどない / ある)
  • Q3 同じことで受診したことがあるか(ある / ない)

用意する結果は「早めのご相談をおすすめする方へ」「来院前に控えておいていただきたいこと」「初めて受診される方へのご案内」の3つ。1つ目はQ1が「それ以上」のときだけを条件にして、Q2とQ3は不問。2つ目はQ3が「ある」だけ。3つ目はQ3が「ない」だけを条件にします。

すると「それ以上・影響あり・受診歴なし」と答えた人には、早めの相談の案内と初診の案内が両方まとめて表示されます。該当した件数も一緒に示されるので、複数出ること自体が不自然に見えません。

条件の付け方には、もう1段細かい話があります。同じ設問の中で選択肢を複数チェックした場合は「そのどれかが選ばれていれば一致」、設問をまたぐと「すべて満たしていれば一致」。Q1の「数週間」と「それ以上」の両方にチェックを入れつつ、Q3は不問、という組み方ができます。症状チェックだと期間や頻度の設問でまとめてチェックしたくなるので、この違いは早めに知っておくほうがいい。

複数一致したときに優先順位を付けて1つに絞る作りは、意図的に入れていません。当たりきっていない結果を1つだけ見せるのが一番まずいからです。無理に絞れば、絞った側の責任で「これがあなたの結果です」と言い切ることになる。ただ、並ぶ順番だけは決められるようにしてあって、結果ごとの表示順の値でソートされます。「早めのご相談を」を必ず先頭に置きたいなら、そこで指定する。

公開後に設問を1問足したくなる、選択肢を入れ替えたくなる——これは起きます。選択肢には安定IDが自動で振られるため、並べ替えても設定済みの条件は生きたままです。

免責の一文は、入口と出口の両方に置く

入口と出口の免責、0件時の文言、設問3問という4つの手当てを並べた図

結果の末尾に注記を1行、では足りません。答え始める前に読ませないと、最後まで判定だと思って進む人が出ます。

置き場所は2か所。前の節で書いたとおり入口の案内文という設定欄は無いので、1つめはショートコードのすぐ上の本文に「受診の目安を確認するもので、医学的な診断ではありません」と書く。2つめは結果の末尾です。結果は複数まとめて表示されることがあるので、末尾の一文は結果コンテンツごとに書いておくほうが確実です。

設問数も表現に影響します。たくさん聞くほど、答えた側は「これだけ答えたのだから判定が返るはず」と期待する。3問程度で終わるほうが、目安を返す建て付けとは矛盾しません。

回答の中身は溜めず、数えるのは分布だけ

医療系では、答えてもらった内容が手元に残ること自体が検討事項になります。診断シミュレーションProの計測は、名前もメールアドレスも持たず、セッション単位で開始・進行・完了・表示された結果を数えるところまで。データは外部の解析サービスへ送らず自社のDBへ溜まり、保持期間は1〜365日(既定90日)で、超えた分はcronで自動削除されます。

そして管理画面に、誰がどう答えたかの明細を並べる画面はありません。 見えるのは開始数・完了数・完了率・平均所要時間・設問別離脱率途中でやめて最後まで進まなかった人の割合。診断やフォームでは設問ごとに見ると、どこで止まっているかがわかる。詳しく見る・結果表示分布と、設問ごとの選択肢の分布まで。個別の回答を問診の材料に使いたいなら、それは結果コンテンツに置いたフォームの送信内容で受け取る仕事になります。何が残って何が残らないかの詳細は個人情報を保存しないまま診断の効果を測るにまとめました。

着地は予約と問い合わせ。結果の中に直接置く

結果コンテンツは通常のブロックエディタで作るので、診療時間の表、アクセスの案内、予約システムへのボタン、Contact Form 7の相談フォームまでそのまま組み込めます。フォームを置くだけなら連携設定は不要です(要件はContact Form 7 6.0以上。CF7側が要求するWordPressは版で変わり、6.0系は6.6以上、6.1系は6.7以上)。

結果はページ遷移なし(AJAX)で同じページに出るため、答えた流れのまま予約ボタンまで進んでもらえる。結果ごとにボタンの文言や置くものを変える設計は診断結果から問い合わせにつなげるに書いたとおりです。

設置そのものは [mqs_simulator id="設問セットID"] を固定ページに貼る1行で、手順は診断を固定ページに設置するにまとめてあります。クリニックのサイトで考えることがあるとすれば、置き場所のほうです。診療科の紹介ページの冒頭か、初めて受診する方向けのページの手前あたりが素直で、症状名で個別に立てたページの下に置くと、そのページの文脈と結果の案内が食い違いやすい。

表現は一度決めて終わりになりません。結果コンテンツは通常の投稿と同じように編集できるので、設問と条件はそのままに案内の原稿だけ直せる。院内の運用が変わったとき、あるいは表現の確認を受けて言い回しを弱めるときに、診断を組み直さずに済む。この用途では、そこがいちばん効きます。

機能の一覧と動作環境(WordPress 6.0以上/PHP 7.4以上)は診断シミュレーションProで確認できます。

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