本プラグインを使用することで、記事の表記を統一することができます。
この一文、意味は通ります。ただ22文字のうち「することができます」の9文字は、「できます」の4文字に置き換えても何も失われません。5文字ぶんの水増しです。
1本の記事にこれが8回出てくると、40文字ぶん。文字数としては大したことがないのに、読んだ印象はかなり変わります。理由は文字数ではなく、同じ引き延ばし方が繰り返されることにある。読者は内容ではなく癖のほうを覚えてしまう。
冗長表現は、書いている本人には見えない
「することができます」を多用する人は、多用している自覚がありません。
これは能力の問題ではなく、丁寧に書こうとすると自然に伸びるからです。「できます」より「することができます」のほうが柔らかく、断定を避けられる感じがする。ビジネス文書の癖が残っている人ほど出やすい。
書いた直後は伸びていることに気づけません。読み返しても、自分の文体として自然に読めてしまう。他人が読むと目立つのに、本人には見えない。この非対称が、冗長表現を編集者の仕事にしてしまう理由です。
そして編集者から見ると、これは赤入れの中でいちばん面白くない作業でもあります。判断が要らず、機械的で、それでも件数だけは多い。
辞書に入れられる冗長表現
正解が一つに決まるものは辞書化できます。同梱している9件はこういう並びです。
| 冗長 | 簡潔 |
|---|---|
| することができます | できます |
| することができる | できる |
| することが可能です | できます |
| ではないかと思います | だと思います |
| という風に | というように |
| まず最初に | 最初に |
| いちばん最初 | 最初 |
| あらかじめ予約 | 予約 |
| 過去の実績 | 実績 |
数が少ないと感じるかもしれません。冗長表現のリストは世の中にもっと長いものがあります。作っている側の判断で9件まで絞ったのは、置き換えたあとの文が必ず自然になるものだけを残したかったからです。
「する形になります」→「します」のように、文脈によっては置き換えると硬くなりすぎるものは外しました。指摘は出るが直すと不自然、という状態はライターを迷わせます。
「可能性があります」を機械置換しない理由

冗長表現の代表格として、よく「可能性があります」が挙がります。「動作しない可能性があります」は「動作しないかもしれません」で足りる、と。
これは仕様として機械置換の対象から外しています。理由は、この表現が本当に必要な場面があるからです。
- 「副作用が出る可能性があります」— 断定を避けることに意味がある
- 「仕様変更で動かなくなる可能性があります」— 確度を落として書くのが正確
冗長かどうかは、書き手が何を意図しているかで変わります。文字列だけ見て判断できない。こういうものは、警告として出すことはできても、置き換え候補を提示してはいけません。ボタンを出した時点で「押すのが正解」というメッセージになってしまうので。
判断が要る指摘と、判断が要らない指摘。この線を引かずに全部をワンクリック修正にすると、ライターが考えなくなります。
重言は、冗長とは別に扱う

もう一種類、似ているようで性質が違うものがあります。重言(じゅうげん)です。
「一番最初」「今現在」「後で後悔」。同じ意味の語が二重になっているもので、冗長表現より明確に「間違い」に近い。
| 重言 | 簡潔 |
|---|---|
| 一番最初 | 最初 |
| 一番最後 | 最後 |
| 今現在 | 現在 |
| 後で後悔 | 後悔 |
| 従来から | 従来 |
| 最も最適 | 最適 |
| 新しい新製品 | 新製品 |
| 挙式を挙げる | 挙式する |
| 電車に乗車 | 電車に乗る |
| 思いがけないハプニング | ハプニング |
| 過半数を超える | 過半数に達する |
同梱の重言辞書は14件です。冗長表現とは別の辞書セットに分けてあります。分けた理由は、チームによって扱いを変えたいから。
重言は誤りに近いのでErrorにしたい、でも冗長表現は好みの範囲なのでWarningのままにしたい。こういう調整は、辞書が分かれていて、それぞれ別のルールから参照されていないとできません。辞書とルールを1対1で持つと、この粒度が作れなくなります。
「過半数を超える」だけは少し毛色が違って、意味が変わってしまう例です。過半数はすでに「半分を超えた数」なので、それを超えると全体の3/4あたりの話になる。数字を扱う記事では実害が出ます。
どこまで直すかは、相手によって変える
冗長表現の指摘をどのくらい強く出すかは、書き手によって変えたほうが実務に合います。
新人ライターには「することができます」を毎回出してもらったほうが、癖が抜けます。一方、文章で食べているベテランに同じ指摘を出し続けると、ノイズにしかならない。その人はその人の判断で伸ばしているので。
日本語校正マネージャーでは、ルールの有効・無効と重要度を、ライター単位・カテゴリ単位で上書きできます。冗長表現ルールを「新人だけWarning、ベテランは無効」にする、といった設定です。カテゴリで分けるなら、コラムでは無効、製品ページでは有効、のような組み方もできます。
この上書きは7つのレイヤー(サイト共通・権限・投稿タイプ・タグ・カテゴリ・ライター・投稿単位)の合成で決まる仕組みで、別記事で詳しく書きました。
直すのは人が押したとき
冗長表現と重言は、置換候補が一意に決まるので、ワンクリック修正の対象にしています。指摘の横にボタンが出て、押すとその箇所だけ置き換わる。
押さないと直りません。保存時に一括で置換する機能は入れていません。1本の記事に8箇所あるなら、8回押すことになります。面倒ではありますが、そのぶん「本当に置き換えていいか」を1件ずつ見ることになる。文章を機械が勝手に書き換える状態は、書き手にとって気持ちの良いものではないので。
なお、ボタンが効くのは本文のリッチテキスト部分だけです。カスタムHTMLブロックの中や、タイトル・抜粋への指摘は表示のみになります。
語の統一と、文の圧縮は別の作業
冗長表現の削減は「文をどう縮めるか」の話です。同じ辞書の仕組みを使う別の作業として、「語をどう書くか」を揃える表記ゆれのチェックがあります。どちらも辞書型ですが、辞書を作るときの注意点がまったく違うので、そちらは別に書きました。
冗長表現を含む8種類のチェックをWordPressの編集画面で回す全体像は、編集フローの記事に。製品としての機能一覧は日本語校正マネージャーから確認できます。
