コンテンツの棚卸し表がいちばん正確なのは、作った日です。
URL、タイトル、カテゴリ、担当、最終更新日、次回見直し、備考。全記事を並べ、古いものに色を塗り、「これで全体が見える」と共有した日の表は、間違いなく役に立っています。問題はその後で、この表は作られた瞬間から古くなり始め、追いつくための更新が続かない。一回目の更新は作った勢いでやる。二回目は誰かに言われてやる。三回目は、来ない。表は残ります。色付きのまま。
止まった表を見て「続ける根性が無かった」と考える人がいますが、そうではないと思っています。表を続けられなかった組織は、同じ期間にサイトの更新そのものは続けている。更新はできているのに、表だけが止まる。この非対称に理由があります。
表が知らないうちに、実物のほうが変わる

止まり方には順番があります。
まずWordPress側で誰かが料金を直す。営業から連絡が来て、担当者が投稿を開いて直して、更新ボタンを押して終わり。表の「最終更新日」はそのままです。表を直すのは別の作業で、その人の頭には浮かんでいないか、浮かんでいても後回しになる。次に、表を見た人が「この記事、去年から更新されていない」と判断して確認に行き、もう直っていることに気づく。表が実物とずれていた。一度ずれた表は信用されなくなり、信用されない表は誰も直さなくなり、ますますずれる。三回目の更新が来ないのは、この時点です。
表を良くする方向の工夫はいろいろあります。条件付き書式で期限が近い行を赤くする、スクリプトを組んでチャットに流す、WordPressの更新日を定期的に表へ取り込む。どれも意味はある。ただ、取り込めるのは「いつ更新されたか」までで、「見たが変えていない」は取り込めません。確認して問題なしと判断した記事は、更新日が動かないので、表の上では放置された記事と同じ顔をする。ここを埋めるには結局、人が表に「確認済み」と書く必要があり、その人は投稿を直した人とは別の人。振り出しです。
止まる理由はひとつ、更新する人が表の外にいる
言い直すと、表が止まる理由は一点に絞れます。更新の主体が表の外にいる。
投稿を直す人は投稿を開く。表を管理する人は表を開く。この二人が同じ人であっても、投稿を直す作業と表を直す作業は別の場面で行われ、片方だけが終わる。表は「更新された」ことを自分では知れないし、投稿は「表に書かれた期限」を自分では知らない。二つの場所に同じ事実を持たせて、人が手で同期する。同期する人にとって、表は自分の仕事の成果物ではなく、誰かの資料です。忙しい月に省かれるのは、必ずそちら。
もう一つ、表は「見に行く」ものだという性質があります。次回見直しの列があっても、その日に誰かが表を開いていなければ、列は飾りです。期限は見に行くものではなく、来るものでないと機能しない。表にリマインダーを足す工夫は、この弱点を補うためのもので、補うほど表がもう一つのシステムになっていく。そこまでやるなら、期限を表ではなく更新される側に持たせたほうが早い、というのがここでの結論です。
期限と確認の記録を、投稿の側に持たせる

発想を逆にします。表に投稿を並べるのではなく、投稿の側に「次にいつ、誰が見るか」を持たせる。
投稿を直す人が開く場所に期限がある。だから、直したときに更新の記録が残る場所と、期限が書いてある場所が同じになり、ずれようがない。「確認したが変更なし」も、投稿の側に確認結果として残せば、更新日が動かなくても放置とは区別できます。担当者が替わったら投稿側の担当者を書き換える。それで次の人にも同じ期限が見える。
期限が投稿の側にあると、もう一つ変わることがあります。期限が「来る」ものになる。表の列に書いた日付は誰かが表を開かない限り誰にも届きませんが、投稿が自分の期限を知っていれば、その日が近づいたときに担当者へ知らせる側に回れる。表を見に行く、という予定に無い行為に頼らなくてよくなります。棚卸しの旗振り役が「そろそろ見てください」と一人ずつ声をかけて回る仕事も、ここで要らなくなる。
一覧は要ります。全体を見渡す用途はなくならない。期限が近い順に並べる、担当者ごとに数える、超過している分だけ抜き出す——棚卸し表でやりたかったことは、だいたいこの三つに集約されます。ただ、その一覧は人が書き込む「入力先」ではなく、投稿の側に持たせた期限と担当と確認結果を集めた「出力」であるべきです。出力なら、実物とずれません。表が三回目で止まるのは表が悪いのではなく、表を入力先にしたから。棚卸し表を作った経験は無駄にならなくて、そこに並べた列——担当、次回見直し、重要度、確認結果——が、投稿の側に持たせるべき項目そのものになります。
一段深く言うと、記事の一部分にだけ期限が要る場面(料金表は三か月ごとに変わり、同じ記事の会社沿革は何年も変わらない)が出てきます。表では列を増やすしかなく、その列がまた止まる。投稿の中に単位を切って持たせられれば、そこも表の外に出せます。
スプレッドシートで済むならプラグインは要らない。コンテンツ更新管理という名前のプラグインを作っている側としても、この問いには先に答えておく必要がありました。答えは上に書いたとおりで、済むかどうかは表の出来ではなく、更新する人が表を開き続けるかどうかで決まります。投稿の側に期限と担当者と確認の記録を持たせる具体的な形は、公開したあとの記事をどう回すかの全体像に書きました。
