クライアントのWordPressサイトに「適性チェック」「おすすめ提案」「タイプ診断」のような診断コンテンツを制作物として組み込みたい——という相談は、最近じわじわ増えています。 LPや採用ページの一部として「診断で選んでもらう導線がほしい」と言われることが多く、受託側としては「作れるか」より「納品して、その後クライアントが自分で運用できる形に渡せるか」が悩みどころになりやすいです。
先に結論を言うと、診断コンテンツは受託案件の制作物として十分組み込めます。 ただし、フルスクラッチで分岐ロジックを書き起こすより、ノーコードで設問と結果を組める仕組みを使ったほうが、納品もその後の引き継ぎも圧倒的に楽です。
この記事は、制作会社・受託開発者が診断を「納品できる形」で組むときの考え方と、検証環境から本番への移し方、クライアントへの渡し方をまとめたものです。

なぜ「自前で分岐を書く」と後で詰まるのか
受託で診断を頼まれたとき、最初に考えがちなのが「JavaScriptで条件分岐を書いて、回答に応じて結果を出し分ければいい」というやり方です。 小さい診断なら確かにそれで動きます。問題は、納品した後です。
- クライアントが「設問を1問足したい」と言ってきても、コードを触れないので結局また依頼が来る
- 結果の文言を直すたびに制作側の工数が発生する
- 担当者が変わると、誰もそのロジックをメンテできなくなる
よくあるのは、納品時点では綺麗に動いていたのに、半年後に「設問の順番を変えたら結果が全部おかしくなった」という連絡が来るパターンです。 ハードコードした分岐は、設問や選択肢の順番に依存していることが多く、ちょっとした並べ替えで壊れます。
受託の制作物として診断を組むなら、コードを触らずに設問・結果・デザインを編集できる状態で渡せるかを最初の基準にしたほうがいいです。 ここが満たせないと、納品後の保守がずっと自社にぶら下がってきます。
管理画面だけで組めると、引き継ぎがそのまま納品物になる
診断シミュレーションProは、設問と結果を管理画面だけ(ノーコード)で組み立てる作りになっています。 編集画面はデザイン/テキスト/設問管理の3タブに分かれていて、見た目・文言・設問の中身がそれぞれどこを触ればいいか一目で分かります。
これは受託の現場では地味に効きます。 納品後にクライアント側で「設問の文言を直したい」「結果の説明文を変えたい」が出てきても、3タブのどこを開けばいいかを一度説明すれば、あとは自分たちで触れるからです。 制作側がやることは、初期構築と、運用マニュアルを一枚渡す程度で済みます。
実際、受託で一番揉めやすいのは「公開後の細かい修正を誰がやるのか」という線引きです。 コードに埋め込んだ診断だと、その修正がすべて制作側に戻ってきます。管理画面で完結する形にしておくと、軽微な修正はクライアント側、設計変更だけ制作側、という分担に自然と落とせます。
分岐は「線を引く」のではなく、結果が条件を持つ
診断を組むときに一番説明が必要なのが、出し分けの仕組みです。 ここを「この選択肢を選んだらこの結果へ」という線引きでイメージすると、設問が増えたときに管理が破綻します。
診断シミュレーションProは線を引きません。 代わりに、それぞれの結果コンテンツが「どの設問でどの選択肢が選ばれていたら自分を表示するか」という条件を持ちます。 この仕組みを回答マトリクスと呼びます。
判定はシンプルです。
- 設定した条件をすべて満たしたとき(AND判定)にその結果が表示される
- 条件に入れていない設問は「不問」=判定に影響しない
- 条件を満たす結果が複数あれば、そのまま全部まとめて表示される(該当件数も出ます)
- 結果はページ遷移なし(AJAX)でその場に表示される
受託で効いてくるのは「不問」の存在です。 結果ごとに見る設問を変えられるので、ある結果はQ1だけを条件にして、別の結果はQ2とQ3を条件にする、といった組み方ができます。 クライアントの要件が後から増えても、既存の結果を壊さずに新しい結果を足せるわけです。
もう一つ、選択肢には安定したIDが自動で振られています。 そのため、設問や選択肢を後から並べ替えても、設定済みの条件はそのまま生きます。 「クライアントが設問の順番を入れ替えたら分岐が壊れた」という納品後の事故が起きにくいのは、受託案件では安心材料になります。
検証環境で組んで、本番へ移す
受託案件だと、いきなり本番サイトで診断を組むことはまずありません。 ステージング環境や自社の検証環境で作り込んで、確認をもらってから本番へ移す、という流れが普通です。
診断シミュレーションProは、設問セットをJSONでエクスポート/インポートできます。 検証環境で組んだ診断を書き出して、本番サイトで読み込めば、設問・選択肢・結果・回答マトリクスの条件ごと移せます。 本番で一から組み直す必要がないので、確認用に作ったものをそのまま納品物として持っていけます。
この納品フローに乗せやすいのは、受託では大きいです。 よくあるのは、検証環境では完璧だったのに本番で手作業で再現したら設定漏れが出る、というミスです。JSONで丸ごと移せると、その手戻りが減ります。
設置自体は難しくありません。 設問セットを作るとIDが振られるので、固定ページや投稿に次の1行を貼るだけです。
[mqs_simulator id="設問セットID"]
id には作成した設問セットのIDを入れます。ブロックエディタなら「診断シミュレーション」ブロックから対象の診断を選んでも設置できます。 テーマのテンプレートやACFなど本文以外の場所から呼び出す場合は、設定の「アセット強制読み込み」をオンにしておくと確実に表示されます。既存のクライアントサイトに組み込むときは、ここで表示が出ずに詰まることがあるので覚えておくと楽です。

結果コンテンツは普通のブロックエディタなので、デザインを合わせ込める
受託で診断を組むとき、意外と重要なのが結果の見た目です。 診断だけ浮いて見えると、せっかくクライアントのサイトに組み込んでも違和感が出ます。
結果コンテンツは通常のブロックエディタで作れます。 見出し・画像・ボタンはもちろん、Contact Form 7のフォームも結果の中に入れられます。 クライアントのブランドに合わせた結果カードを作ったり、結果から問い合わせフォームへつないだりが、ブロックエディタの操作だけで完結します。
ここは制作会社の腕の見せどころでもあります。 診断本体のデザインはデザインタブでカラープリセットや色・枠線・進捗バーを設定でき、結果の中身はブロックエディタで自由に作れるので、サイト全体のトーンに寄せやすいです。 ただ、既存サイトに入れる場合は、最後に周囲のデザインとのなじみを実機で確認したほうが安心です。CSSの微調整が必要になることはあります。
似た案件は設問セットを複製してテンプレ化できる
同じ業種のクライアントを複数抱えている制作会社だと、診断の骨格が似通うことがよくあります。 たとえば「サービス選びの適性チェック」のような型は、業種を変えても設問構成が近くなりがちです。
診断シミュレーションProは設問セットを複製できるので、一度作った診断を雛形にして、文言や結果だけ差し替えて量産できます。 案件ごとにゼロから組むより、自社の「診断テンプレ」を何種類か持っておいて、複製して中身を入れ替えるほうが構築工数を抑えられます。 受託の収益性を考えると、この量産のしやすさは効いてきます。
ライセンスはサイト単位、移し替えもできる
受託で気になるのがライセンスの扱いです。 診断シミュレーションProのライセンスは1サイト単位でアクティベートします。
ここで誤解しやすいのが、解除したらデータが消えるのではないか、という点です。 ライセンスを解除・無効化しても設問データは消えません。 解除すれば別サイトへ移し替えられるので、検証用サイトで使っていたライセンスを本番に移す、といった運用ができます。 データが消えるのはアンインストール時だけです(管理画面で完全削除のオン/オフを切り替えられます)。
受託の組み方は案件によって分かれます。 クライアントのサイトでクライアント名義のライセンスを使うのか、自社で管理して保守契約に含めるのか。どちらにしても、サイト単位で発行・移し替えできる仕組みなので、納品形態に合わせて選べます。 自動アップデートには有効なライセンスが必要なので、保守を自社で持つなら、更新まで含めてどちら名義にするかを先に決めておくと後で揉めません。
向いている案件と、無理をしないほうがいい案件
診断コンテンツが制作物として活きるのは、回答に応じておすすめや適性を提示したいケースです。
- 商品・プランのレコメンド診断
- タイプ診断・性格診断
- お悩み・症状チェック
- 適合チェック・問い合わせ前の事前ヒアリング
- 料金シミュレーション風の概算提示
逆に、無理に診断で組まないほうがいい案件もあります。正直に線を引いておくと、見積もり段階での認識ずれを防げます。
- ECカートの完全な代替(在庫・決済・配送まで含む購入処理)
- 設問が数十問に及ぶような超巨大フォーム
- CRMが主体で、診断はその入り口に過ぎないような大規模運用
特に「料金シミュレーション」をクライアントに求められたときは要注意です。 これは条件に応じて該当プラン・概算レンジ・見積もり結果コンテンツを出し分けるものであって、金額をその場で四則演算するライブ計算機ではありません。 本物の動的計算が必要な案件なら、それは別の作りで対応すべきだと、提案の段階で正直に伝えたほうが後でこじれません。
まとめ
受託案件で診断コンテンツを組むときに大事なのは、「動くものを作る」ことより「納品して、その後クライアントが運用できる形で渡す」ことです。
ノーコードの管理画面(デザイン/テキスト/設問管理の3タブ)で組めると、軽微な修正はクライアント側に任せられ、保守が自社にぶら下がりません。 回答マトリクスのAND判定と「不問」の組み合わせで結果ごとに見る設問を変えられ、選択肢の安定IDのおかげで後から並べ替えても分岐は壊れません。 JSONエクスポート/インポートで検証環境から本番へ丸ごと移せるので、納品フローにそのまま乗せられます。 似た案件は設問セットの複製でテンプレ化でき、ライセンスはサイト単位で移し替えも可能です(解除してもデータは消えません)。
診断シミュレーションProは、まさにこの「制作会社の制作物として組み込む」用途を想定して作られています。 クライアントワークで診断を提案する機会があるなら、まずは小さな診断を1本、検証環境で組んでみて、納品から運用引き継ぎまでの流れを一度通してみるのが分かりやすいはずです。
